BLOF理論とは

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BLOF理論とは

小祝政明先生の提唱するBLOF理論とは、「Bio Logical Farming:生態系調和型農業理論」です。

BLOF理論に基づく有機栽培は、
①植物生理に基づいたアミノ酸の供給
②土壌分析・施肥設計に基づいたミネラルの供給
③太陽熱養生処理による土壌団粒の形成、土壌病害菌の抑制と水溶性炭水化物の供給による地力の向上により、高品質・高栄養価・多収穫を実現するものです。

BLOF理論に基づく有機栽培

①アミノ酸の供給

化成肥料を用いた慣行栽培では、作物が吸収した無機態窒素と光合成で作った炭水化物を利用してアミノ酸を合成し、タンパク質の合成をします。一方、BLOF理論では、炭水化物付き窒素であるアミノ酸を活用するため、タンパク質合成に炭水化物をあまり必要とせず、余剰となった炭水化物を、植物体を強化する植物繊維、根酸、収穫物の栄養(でんぷん、糖、有機酸、抗酸化物質)に利用できるため、病害虫に抵抗できる強い体を持ちながら、高品質・多収穫を実現できます。

②ミネラルの供給

ミネラルは、土壌分析によりその過不足を把握し、分析結果に基づき施肥設計を行い、適量を施肥します。ミネラルは、光合成に必要な元素であり、様々な生化学反応を制御しているため、ミネラルが不足した状態で窒素が効くと作物は軟弱な成長になり、病害虫被害に遭いやすくなるので、ミネラル先行窒素後追いの施肥管理をします。

③太陽熱養生処理

太陽熱養生処理は、圃場に中熟堆肥と肥料(NPK,ミネラル)を施肥後、適量の水を与えた上でマルチをかけて、積算温度450~900度を目安に養生処理するものです。太陽熱養生処理は、下記の効果があります。
・土壌に団粒構造が形成され、作物の根張りが改善し、光合成能力を上げて高品質・多収穫が実現する
・土壌病害菌と拮抗する有用微生物を土中に増殖させ、病気の発生を防ぐ
・水溶性炭水化物を供給することで地力が向上し、その地力を最大限に活かすことで、高品質・多収穫が実現する

講師のご紹介

小祝政明(こいわいまさあき)

小祝政明(こいわいまさあき)

1959年 茨城県生まれ
一般社団法人日本有機農業普及協会(JOFA) 代表理事

農産物の美味しさは、その植物の生命力の強さに由来する。本当に良い農産物を生産するには、自然生態系のメカニズムや植物生理を無視しては成り立たない。自然生態系を真摯に学び、それに調和し、再現可能な科学的なアプローチで確実に栽培する。そのような農業理論で日本の未来を担う有機農業技術者を育成していきたいと考えている。

【 主な著書】
「有機栽培の基礎と実際」「有機栽培の肥料と堆肥」「有機栽培のイネつくり」「有機栽培の病気と害虫」 「有機栽培の野菜つくり」「有機栽培の果樹・茶つくり」有機栽培の施肥設計」 (農文協発行)等

【 プロフィール】
中学・高校生時代に食品添加物が原因で体に変調をきたし、自然食療法で治療する。食材の形は同じでも中身は違うことに気づき、26歳から日本全国津々浦々安全な作物を生産している生産者を訪ね、現場で学習。その後、茨城で自ら土地を購入し、米・野菜づくり実験に7年間取り組む。またその後、オーストラリアの有機農業研究所に微生物エンジニアとしてスカウトされ、牧場の土壌改良に取り組む。オーストラリアと筑波で微生物が有機物を分解し、その有機物が再度有機物になっていくシステムを学ぶ。
現在、日本国内のみならず、アフリカ、中国等世界各地でBLOF理論に基づく農業指導を行っている。

有機農業の現状と
BLOF理論実践における成果

過去に、Nature誌にて有機農業と慣行農業の収量比較をしたデータが掲載されたことがあります。34種類の作物平均に関するデータで、有機農業での収穫量は、慣行農業に比べて66%、またオーガニック食品の栄養価について、2009年7月のイギリスでの調査結果では、栄養学的に優位性は認められず、また、アメリカでも、栄養価に関しては差は見られないという結果が2012年9月に発表されました。

またもう一つ、こちらはよく知られている話ですが、農産物の栄養価は、50年前に比べると大きく減っています。

日本科学技術庁 食品成分分析調査 1951年と2001年の比較

そしてさらに、下記のとおり、体内に入った後に発がん性物質を発生させる恐れがある硝酸イオン(硝酸態窒素)濃度は、有機栽培で生産された作物が必ずしも低いというわけではないというサンプル調査結果もあります。

試食品ほうれん草の硝酸イオン・糖度比較

BLOF理論に基づく有機栽培は、上記の結果と異なり、栄養価が高く、硝酸イオンが低い作物を生産することが可能です。
下記図表は、BLOF栽培と一般流通品のブロッコリー、ホウレンソウの栄養価を比較した図表です。
表中の黒い数字は一般流通品、赤字は、BLOF理論に基づいて栽培された有機野菜のデータです。

いずれも、糖度、抗酸化力、ビタミンCが全国平均に比べて圧倒的に高く、硝酸イオンの値が圧倒的に少ないです。これは、決して偶然やまぐれではなく、BLOF理論で植物生理や自然生態系のメカニズムを学び、科学的なアプローチ(土壌分析、施肥設計、太陽熱養生処理を実施し、植物生理に沿った理論的な栽培管理)を行うことで、高栄養価・低硝酸イオン濃度を狙って栽培した結果です。

【ブロッコリー】

表1

【ほうれんそう】

表2

そして、こうした高栄養価の野菜は、特定の生産者のみが実現できるものではなく、BLOF理論を学べば誰でも作ることができます。
弊社がBLOF理論に基づき栽培したほうれんそうは、抗酸化力が217、ビタミンCが108等高栄養価を実現し、2018年冬期栄養価コンテストで優秀賞を受賞しました。

BLOF理論では、多収穫も実現できます。写真のミニトマトは海外の事例ですが、連作障害で栽培が出来なくなった畑をBLOF理論に基づき再生させたものです。ミニトマトがすだれ状態に実をつけ、過去最高の収穫量となりました。

BLOF理論での多収穫

BLOF理論では、地力と微生物の力、そして植物の力で、虫害・病害を防ぎます。

下写真は、BLOF理論に基づき、農薬を使わずにキャベツを栽培している圃場ですが、防虫ネット不使用で虫害がありません(※)。

防虫ネットが無くても害虫がつかない

このキャベツ畑では、植物生理に基づくアミノ酸肥料の施肥、土壌分析結果に基づく適正なミネラル肥料の施肥、中熟堆肥の施用と太陽熱養生処理による土壌団粒化と土壌病害菌の抑制、水溶性炭水化物の供給による地力の向上で、キャベツは固い細胞壁が形成され、防虫ネットはもちろん、フェロモン剤、BT剤なしで病気も虫害も出さずにキャベツを栽培できました 。

(※)防虫ネットとは作物を栽培する際の被覆資材で細かい網目状のネットになっているものです。キャベツ等に蝶等が飛来して産卵するのを防ぎます。物理的に害虫の飛来を防げますが、労力がかかり、地中を移動してやってくる害虫は防げません。有機栽培では、有機JAS制度で使用を認められているフェロモン剤(昆虫の産生物質であるフェロモンを利用した製剤)やBT剤(天敵微生物を利用した生物農薬の一種)を使用することもできますが、この圃場ではそうした資材は使っていません。

上記は、BLOF理論での栽培成功例のほんの一例です。
BLOF理論を実践する生産者は、日々、作物と向き合いながら新たな仮説と検証を繰り返しており、生産現場から理論がどんどん進化しています。2016年から東京大学と理化学研究所、そして小祝政明先生が代表を務める(社)日本有機農業普及協会が共同でBLOF理論の実証実験を行っており、有機栽培に関する新しい発見が次々と発表されています。

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